部室の窓際に置き忘れたペットボトルがある。誰のものか、いつのものか。わからぬまま、透明さを保つ謎の液体。キャップは薄く埃を被り、手に取るものを度々不快にさせる。代々、クラブ内で語り継がれるそれは部室のマスコットのようでもある。
「誰か、開けてにおいを嗅いでみなよ?」
「捨てなよ」
「絶対、触りたくない」
様々な意見が出ていたが、何故か捨てられることはなかった。
卒業式、私は一人それを持ち上げた。
すると、下にメモがあった。これは重石だったらしい。
日で傷み黄色くなった小さなメモ用紙には一言。
「今更、気付いてももう遅い」
私はまたメモ用紙を畳み直し、ペットボトルの下に隠した。
メモを書いたやつは後悔しているのか、読んだことを嘲笑っているのか。
わからぬまま、私は駆け出した。
今すぐ、あいつに想いを伝えねばならないと思ったのだ。