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会社/童話/菓子

 菓子折り持って、得意先に謝罪に行く。へいほーへいほー、仕事が好き。続きの思い出せない歌が頭を過る。
 得意先が白雪のように美しい人ならいい。しかし、血の気が引いて白くなっているのは俺である。
 持ち物は毒リンゴならいい。残念ながら、口にせずとも俺が先に倒れそうだ。
 真実の愛で失敗は帳消しにならない。
 ガラス越しに映る自分に問いかける。

 

――鏡よ、鏡よ、鏡さん
――世界で一番反省しているのは誰?

 

 俺ではない。
 気付いて、俺は颯爽とビルへと入っていった。